彼らの手のひらはきまっていつも乾いていて、深い皺を刻んでいる。
あの国の男特有の手のひらで、太陽があんなにも近いからなのかどうか、
彼らはどこもかしこも乾いている。

子供みたいな目をきょろきょろとさせて、はだしで、
だけれどがさりとしたなめし皮のような手のひらと指先が、暖かいオイルを従えて、
私の足の5本の指すべてに彼の指を絡ませるように、怪しく滑っていく。

仕事中の男ほどそそるものはなくて、私はみっともなくも媚態を作り、
彼の手の動きに合わせて首をのけぞらせる。
縮れ毛のこめかみに汗の玉が浮かんで、まだ幼い頬のラインをたどり、
彼が捧げ持つ私の足の甲に落ちる。

ランチ程度の金で、この国の若い男にフットマッサージをさせてご満悦な私は、だけど違う色で瞳を輝かせる。子供のくせに場違いなほどに熟練した指先は、かたつむりが葉脈を確かめるように、ゆっくりと脛を登っていく。子供のくせに君はすべてを知ってるの? チクリと痛い。目を閉じてそれから顎先に媚態を漂わせて、気を練るように腹に欲を燃やしていく。

やがてくる瞬間は、まるで幸福の光で頬を叩かれたように、何度やってもなれなくてそれはまさに歓喜。働く男が目の前の女の欲に気付いた瞬間、その瞳が戸惑いから同じ温度まであっという間に燃えあがる瞬間を見る。私は、どさり、とチェアに体を沈める。そして彼は知る。その瞳にあの意思を見いだす。この展開の早さ。それなのに、腰は逃げることなどせずにとっくの間に待ち構えているのだから私は恥ずかしい。

マッサージルームの簡易ベッド。窓からの風にめくれてしまいそうなクリーム色の安いカーテン。そして、それに気づいた男。こんなにたやすいことはない、そしてこんなに優しいことも。目の前の黒い男は、ふくらはぎを両の手で捧げ持ったまま、顔を上げる。
初めてその瞳の奥を見る。その眼はもう客とセラピストのものではなかったから、私は胸を衝かれたようになってどこにも余裕がなくなってしまう。うそ、ほんのお遊びのつもりだったの、そこから私はギシというビニールベッドのきしむ音を聞く。彼の指が迷うことなく進んで、つかまれた手首、首元、それから胸へ、暖められたオイルが塗りつけられていく。なめし皮の大きな量の手のひらが私の頬をすっぽり挟んで私は溺れそうになって叫ばずにはいられない。生暖かいフランジパニの香り。さっきまでふくらはぎを温めていたのに。

遠くの東屋でンドネシア風鈴が鳴るのが聞こえる。なんて呑気な。
そして私は叫ぶ寸前で唇をふさがれて、本当に欲しかった温度を知ることになる。からめあった指先はオイルで滑り、もどかしくてうまく握れない。フランジパニの香りはよかったけれども今では味気なく感じる。暖められた彼のにおいは甘ったるい香水の奥に沈むかすかな獣の匂い。子供のくせに。急に残酷な気持ちが湧き上がる。まだ彼がマッサージ師であったころのけなげな横顔を思い出す。いまはもう完全に私の男だ。私を組み敷く権利をもう持ってる。

押し付けられた胸が、その早い鼓動を伝えてくる。
どちらの速度かわからない、早鐘のように打つ心臓は、私たちをせかす。
ああ、本当に欲しい。

こんな時に戸惑う男を見たことがない。
彼も当然のようにジョッキーショーツに手をやりまるで小便でもするかのように、実に自然にそれを取り出す。もう私は叫ばない。あんなに音を鳴らしたベッドはぴたりと音を止めて、私は息をのむ。オイルとは違うぬめりが私をかすめてそのまま迷うことなく奥まで進む。押しつぶされた風船のように、喉からため息が漏れる。甘い痛みだ、慣れ親しんだ、だけど他人の見知らぬ他人の体の一部。行きずりに刺し殺される、通り魔は私の方だろう。だけれども彼の律動は私の気に入るやり方だから、それを伝えたいのだけれども、目を開けることもできない。まるで食虫花だ。放すことができない。中心に飛び込んだ大きな熱を確かめるようにぎゅうぎゅうと締め付けて、細くてよくしなる黒い腰に、バックルさながら濡れたふくらはぎを巻きつける。この律動、耳たぶに感じるぶっつりとした二つの厚い唇、そして男の息と熱。完璧だ。これぞ、旅行者の快楽。

とろけた脳みそにただれた欲情、安っぽいマッサージベッドをぎしぎしと揺らして、
きっと隣の客は気づいている。
押し殺した息はもういちど、締め切ったカーテンをひらりと揺らして、
誰かが覗いて眉を潜めてくれるのを私は待っている。

客を犯したマッサージ師はクビになるのかしら。
そんな風に考えながら、最上の甘さを、この瞬間を膣で食む。
きっとそんなことはない。なぜならこれが自然なのだから。
個室で男の濡れた手で足をこすられて、どうして体を合わせないでいられる?
欲しいものを欲しいときに欲しいように食べたいと、
そしてそれが目の前にあって、なぜ彼が責められるの。

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