唐突にして血は甦る

こんなにも多くのことを忘れていたのかと、愕然とする。

あの若い男が、情熱をもって私に触れて、それから何が起こったかといえば私はまたこうして戻ってきた。

昔は毎日がこうだった

二時間もかけてバスルームにこもり全身をピカピカにし、考えていることといえば彼の影が自分のそれと重なるその時のことばかり

あまりにも長い間私はそれを忘れていて、

もう戻らないのだと思っていた。

 

それなのにあの男は私にいともたやすく火をつけて、あっという間に私は息を吹き返す。

まるで唐突にして戦場に戻された戦士の気分。

体はなまってはいるものの、神経はあっという間に研ぎ澄まされて、五感は記憶の中で彼を正確に再現し、

指先までがももう一度愛の感動で震えたがっている

 

そのようにして私はやすやすと目を閉じることを選ぶ

あんなにも、、

あんなにも試行錯誤し、積み重ね、要らぬ心配をし、あれやこれやと頭を悩まし、そうやって日々を生きてきたというのに、それがおそらく成長ということなんだろうと思っていたのに、

こうしてもう一度愛に落ちるチャンスを得れば、

冴えた直観のみが私を支え、思惑などなんと下らぬことかと、あっという間にロケットに着火してとっとと飛び出してしまうから恐ろしい。

私はこれから、もう一度落とし穴に落ちる。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です